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#3 【サービス業】株式会社パソナグループ(2168)の人的資本開示|有価証券報告書(第19期)

1. ひとこと総評

株式会社パソナグループの人的資本開示は、創業以来の企業理念である「社会の問題点を解決する」という使命と、「人を活かす」という本業そのものが、社内の人事戦略と見事に直結している点が最大の特徴です。中期経営ビジョンで掲げるBPO事業の高付加価値化や「Well-being産業」の創造に向け、DX人材の育成やエキスパート職の制度拡充など、事業成長を牽引する具体的な施策が豊富に展開されています。万博でのパビリオン運営にみられる「オープンポジション制度」など、従業員の挑戦を後押しするカルチャーも魅力的です。一方で、多様な事業を展開する巨大グループであるため、各事業の専門人材の市場価値に見合った柔軟な処遇制度のさらなる進化や、人的資本投資に対する財務的インパクトの定量的可視化が、今後の持続的成長に向けた「伸びしろ」と言えます。

2. 人的資本開示 4つの評価ポイント概要

以下の4つの評価ポイントについて、倉庫管理人独自の視点で評価(◎, ◯, △, ×)を行いました。

評価ポイント 評価 一言コメント
① 経営戦略との連動性 BPOの高付加価値化やWell-being事業の成長戦略に対し、DX人材やエキスパートの育成・配置が的確にリンクしています。
② 開示データの数値と変化 女性管理職比率等の実績は圧倒的ですが、人材投資が事業の収益にどう結びついているかの定量的指標の拡充に期待します。
③ 一貫したストーリー性 創業理念から万博パビリオン運営等の成長機会の提供まで、「人を活かす」ストーリーが非常に一貫しており説得力があります。
④ 戦略、人事、従業員処遇体制の一貫性 エキスパート職特別手当などの整備が進んでいますが、高度専門人材の市場価値に連動したさらに柔軟な処遇の追求が課題です。

3. 評価ポイントの深掘り分析

各項目について、「評価できる良い点」と「今後の課題・改善点」の双方の視点を取り入れ詳細に分析します。就活生にも勉強になる専門用語を交えて解説します。

① 経営戦略との連動性

パソナグループは、「PASONA GROUP VISION 2030」において、既存のBPOソリューション事業の高付加価値化と、新たな「Well-being産業」の創造を成長戦略に掲げています。この事業ポートフォリオの進化に対し、人材戦略が見事にリンクしています。

特に評価できる良い点は、戦略実行の要となる「デジタル人材」の育成です。全従業員を対象とした「AI活用を前提としたDX」の推進や、未経験からインフラエンジニアを目指す「Engineer-Pass」プログラムなど、事業環境の変化に合わせて従業員に新しいスキルを習得させるリスキリング(成長分野に労働力を移動させるための再教育)の仕組みが機能しています。また、主力事業であるBPO分野において「タレントマネジメントシステム」の基盤を強化し、従業員の保有スキルや過去の評価を一元管理して適材適所の人材配置を実現している点は、経営と人事の連動を体現する好例です。

今後の課題・改善点を挙げるとすれば、海外事業(グローバルソリューション)の成長を牽引する人材の戦略的育成です。米国やアジア地域での人材サービスが拡大する中で、グローバルな視座で事業開発を担う経営人材のパイプライン構築に関する具体的な施策がさらに明示されると、国内外を網羅する強固な戦略連動がアピールできるでしょう。

② 開示データの数値と変化

パソナグループの開示データは、「ダイバーシティ」や「働きやすさ」の観点で圧倒的な水準を誇っています。主要会社における「管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合」は57.4%(株式会社パソナグループ)に達しており、日本企業の平均を大きく上回ります。また、「男性労働者の育児休業取得率」も高水準で推移しており、多様な人材が活躍できる基盤が数値として実証されている点は高く評価できる良い点です。さらに、独自のCareer Well-being指標を設け、従業員のエンゲージメント(従業員が会社のビジョンに共感し、自発的に貢献しようとする意欲や働きがい)を測定し、ポジティブな回答割合をトラッキングしている点も先進的です。

今後の課題・改善点としては、これらの人的資本への投資が、事業の「生産性」や「収益力向上」にどう結びついているかを示す、財務インパクトとの連動指標の開示です。BPO事業におけるタレントマネジメント最適化による案件の成約率向上度合いや、DX人材育成プログラムを経た従業員が生み出した業務効率化のコスト削減額など、事業成長のドライバーとなる定量的KPIが設定されると、投資家や求職者に対する「人的資本投資の費用対効果」の説得力が一層増すと考えられます。

③ 一貫したストーリー性

同社の最大の評価できる良い点は、「人を活かす」という理念が、社会へのサービス提供だけでなく、社内の人材育成にも一貫して流れているという美しいストーリー性です。「自分の未来は自分で創る」という人材育成方針のもと、役職や入社年次に関わらず社会課題の解決策を提言する「パソナ・シャドーキャビネット」や、新規事業提案プロジェクト「Design the NATUREVERSE Action」の実施など、自律的なキャリア形成とイノベーションを促す風土が根付いています。

また、大阪・関西万博の「PASONA NATUREVERSE」パビリオン運営において、自ら挑戦したい人材が手を挙げて参加する「オープンポジション制度」を活用したエピソードは、組織の枠を超えた成長機会の提供という点で、求職者にとって非常に魅力的なストーリーとして映ります。経営トップ自らが14,000名以上の従業員と対話する「タウンホールミーティング」の開催も、ビジョン浸透という点で一貫しています。

今後の課題・改善点としては、中途採用でジョインした人材や、M&Aによってグループ入りした多様なバックグラウンドを持つ人材が、この強固なパソナカルチャー(Pasona Way)と自らの価値観をどのように融合させ、事業シナジーを生み出しているのかという「インクルージョン(包摂)」のストーリーが加わると、より多様なキャリアを持つ人材を惹きつける力強いメッセージになるでしょう。

④ 戦略、人事、従業員処遇体制の一貫性

企業が新たな価値を生み出すためには、挑戦や専門性の向上が適切に報われる評価・処遇制度が不可欠です。パソナグループは、幅広い職務を経験する「ゼネラリストコース」に加え、特定分野で高度な専門性を深める「エキスパートコース」を拡充し、直近の成果や革新性に応じて毎年手当が変動する「エキスパート職制特別手当」を新設しました。これは、職務(ジョブ)を明確に定義し、その職務にふさわしいスキルを持つ人材を適正に評価・処遇するジョブ型雇用の要素を取り入れたものであり、専門人材の獲得・定着に直結する評価できる良い点です。

さらに、評価制度において「業績」と「行動指針(Pasona Way)」の2軸に基づくMBO制度(目標管理制度)を導入している点も、短期的な利益追求に偏らず、中長期的な企業価値向上に資する行動を評価する仕組みとして一貫性があります。

今後の課題・改善点は、事業環境の変化スピードが速いDX・IT領域や新規事業開発を担う「超高度専門人材」に対する処遇の柔軟性です。従来の給与体系の枠組みを超え、外部の労働市場価格(マーケットバリュー)にリアルタイムに連動したダイナミックな報酬体系やインセンティブ設計をいかにグループ全体で構築・運用していくかが、Well-being産業など新規事業領域の成長をさらに加速させる鍵となります。

4. まとめ

パソナグループは「社会の問題点を解決する」という理念を体現するソーシャルソリューションカンパニーであり、その本業の特性上、社内の人的資本投資においても極めて高いレベルの取り組みを行っています。就職活動中の皆さんにとって、多様な働き方が担保されているだけでなく、未経験からITエンジニアを目指せる制度や、万博プロジェクトのような国家的イベントに自ら手を挙げて参加できる風土は、圧倒的な自己成長の場としてこの上ない魅力です。

一方で、この企業に入社して直面しうる課題は「圧倒的な主体性の要求」です。会社は豊富な挑戦機会やリスキリングの場を提供してくれますが、それを活かして「自分の未来は自分で創る」ことができるかは、個人の自律的な行動にかかっています。指示を待つのではなく、自らのキャリアビジョンを持ち、社会課題の解決に向けて貪欲に専門性を磨き続ける覚悟が求められます。企業研究においては、「自分が社会に対してどのような価値を提供したいのか」を明確にし、同社の用意する多様な成長プラットフォームをどう使い倒すかという主体的な視点で面接に臨むことをお勧めします。