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#161 【銀行業】株式会社CCIグループ(7381)の人的資本開示|有価証券報告書(2026年3月期)

1. ひとこと総評

株式会社CCIグループ(旧:北國フィナンシャルホールディングス)は、持株会社体制への移行と社名変更を経て、伝統的な銀行業の進化と非金融事業の拡大を同時に進める「両利きの経営」を本格化させている企業です。今回の有価証券報告書の人的資本開示からは、事業ポートフォリオの大転換に伴い、人材ポートフォリオの再構築を経営の最重要事項と明確に位置付けていることが強く読み取れます。特に、キャリア採用比率が65.6%と高く、ジョブサイズに応じた「キャリア型人事制度」を導入している点は、若手や転職市場の人材にとって実力次第で存分に活躍できる魅力的な環境と言えます。

一方で、急激な組織変革の過渡期にあるため、社名変更に伴うブランド理念への共感度低下や、女性の管理職比率、男女間の賃金差異といった組織課題も浮き彫りになっています。しかし、経営戦略コンサルタントの視点から見れば、これらのネガティブな事実や数値を一切隠すことなく赤裸々に開示し、自ら的確な要因分析を行ったうえで、CEOとの直接対話や現場主導の意識改革といった具体的な改善策を提示している姿勢は、経営の透明性が極めて高く、同社の変革ポテンシャルの高さを証明する優れた開示であると高く評価できます。

2. 人的資本開示 4つの評価ポイント概要

以下の4つの評価ポイントについて、倉庫管理人独自の視点で評価(◎, ◯, △, ×、※情報不足の場合は「-」)を行いました。

評価ポイント 評価 一言コメント
① 経営戦略との連動性 新事業への明確な人材シフト目標(699名体制等)を掲げ、事業ポートフォリオと人材戦略が力強く連動しています。
② 開示データの数値と変化 eNPS改善や男女の賃金差異56.3%など、ポジティブな成果とネガティブな課題の双方を極めて透明性高く開示しています。
③ 一貫したストーリー性 AI人材育成から出向まで一貫する一方、社名変更に伴うブランド理念共感度の低下が課題として明記されています。
④ 戦略、人事、従業員処遇体制の一貫性 キャリア型人事制度等で基盤は一貫していますが、一般社員のインセンティブ報酬等の具体的な記述が見当たりません。

3. 評価ポイントの深掘り分析

各項目について、【評価できる良い点】と【今後の課題・改善点】をセクションごとに分けて詳細に分析します。

① 経営戦略との連動性


【評価できる良い点】
経営戦略と人材戦略の連動性が非常に高く評価できます。同社は生成AIやフィンテック技術の進展といった厳しい環境認識のもと、従来の「北國銀行ブランド」に加えて、新規ビジネスを担う「CCIブランド」を立ち上げた2ブランド体制へ移行しています。この「両利きの経営」という事業戦略に対し、求める人物像を「事業戦略を実現・発展できるプロフェッショナル人材」と再定義し、明確な人材ポートフォリオの転換を図っています。

具体的には、コンサルティングやデジタル・システム、地域活性化といった新規ビジネス領域に従事する社員数を、2026年3月末時点の488名から、2030年3月期には699名へと拡大させる具体的な数値目標を開示しています。さらに、変化の激しい環境を乗り越えるため、社員が自らの意思で学び挑戦する「キャリア自律」を経営基盤に据えており、事業戦略と人材の重点配置が的確にリンクしている点が素晴らしいです。

【今後の課題・改善点】
一方で、事業領域の拡大や求められる専門性の高度化に対し、同社自らが「人材要件の定義およびスキルの可視化についてはさらなる精緻化の余地がある」と正直に課題を認識し、開示している点は透明性の観点から評価に値します。現状の開示では、コンサルティングやIT、地域活性化など多様な新規領域において、具体的にどのようなスキルセットや資格・経験を持った人材がどの程度不足しているのかという詳細な粒度での記述は見当たりません。データに基づく人材配置の最適化に向け、今後は各事業ポートフォリオにおける人材要件の精緻な指標の開示が期待される伸びしろと言えます。

② 開示データの数値と変化


【評価できる良い点】
法定開示項目にとどまらず、独自の指標を用いてポジティブな面とネガティブな面の双方を数値で詳細に開示している姿勢が高く評価できます。例えば、社員の働きがいを示す「エンゲージメント(企業と従業員の信頼関係や貢献意欲)」の指標としてeNPS(社員ネット・プロモーター・スコア)を導入しており、平均推奨度が過去最高の6.1点に改善したことを具体的な数値で示しています。

また、「男女の賃金の差異」が56.3%と大きいことについても包み隠さず開示し、その原因が「女性の管理職昇進率が低いこと」と「従来のコース別人事制度の影響で女性が個人部門等に偏っていること」であると自ら正確に要因分析を行っています。男性育休取得率が105.6%と極めて高い水準にある一方で、平均取得日数が約15日と短期間にとどまっている事実を課題と捉え、「職場風土への不安」を阻害要因として分析し、「プレパパセミナー」の実施など具体的な施策に落とし込んでいる点は、数値目標の背景にある企業の意図が明確で優れています。

【今後の課題・改善点】
課題の特定と分析能力は極めて高いものの、いくつかの数値目標については未達や今後の改善を要する段階にあります。女性管理職比率の目標30%(2031年3月期)に対し、2025年度実績は22.1%にとどまっており、意思決定層の多様性確保は途上です。また、今後の人材戦略上の重要課題として「潜在的なビジネスケアラー(仕事と介護を両立する人材)の把握」を挙げ、アンケートで約62%の社員が介護制度を把握していない事実を開示していますが、実際の介護休業取得率や両立支援制度の利用実績といった具体的な数値目標の記載は見当たりません。この点は、今後の課題として情報の充実が求められます。

③ 一貫したストーリー性


【評価できる良い点】
「なぜその人材投資を行うのか」というストーリーが一貫して論理的に語られています。同社は「人材エコシステム」という概念のもと、採用・育成・配置・活躍・輩出のプロセスを循環させています。特に、社員が自律して学び続ける「リスキリング(新しい業務に必要なスキルを学び直すこと)」の実践として、大学院(MBA等)での学びを戦略上の重要要素と位置付け、修了生・在学生が102名に拡大し、若手社員のグループ会社社長就任という実践的成果を生み出している点は見事なストーリーです。

また、生成AIの台頭を見据えたデジタル・AI活用人材の育成では、全社員を3層構造(レベル1.0〜3.0)に定義し、約900名が日常業務でAIを活用する「Copilotチャンピオン」制度を通じて、現場主導で「人:AI=9:1から5:5へ」という抜本的な業務改革を進めるプロセスが明確に描かれています。社内で育成したプロ人材を地域企業へ「出向」という形で輩出し、プロ経営者として地域貢献と知見の還流を図る仕組みも、独自の優れたストーリー性を持っています。

【今後の課題・改善点】
一貫した施策が展開される一方で、社名変更や「両利きの経営」への急激な事業ポートフォリオ転換の副作用として、「CCIグループのブランド理念に共感できる」社員の割合が77.7%から63.1%へ低下したことが明記されています。CEOとの1on1ミーティングや、社内ポータルを活用した対話施策などに取り組んでいる点は評価できますが、企業としての存在意義や新たな戦略と日々の業務との接続について、社員一人ひとりが「自分ごと」として再構築できていない現状は、組織風土醸成における今後の大きな伸びしろです。

④ 戦略、人事、従業員処遇体制の一貫性


【評価できる良い点】
経営戦略に基づく人事戦略が、具体的な処遇体制にまで落とし込まれています。同社は、年齢や勤続年数、従来の「総合職・一般職」といったコース区分に依拠した評価を廃止し、職務のジョブサイズに応じた公正な処遇を実現する「キャリア型人事制度」を導入しています。これは職務記述書に基づいて評価を行う「ジョブ型雇用」に近いアプローチであり、キャリアレビューにおいて「グレード」と、「スキル」「役割」「生産性」「貢献度」の4つの着眼点から対話を通じて処遇を決定する透明性の高い仕組みが構築されています。

さらに注目すべきは、退職一時金制度を廃止し、相当額を「キャリア支援金」として毎月の給与に上乗せして前払いする制度を導入している点です。これにより、社員の自己投資や自律的な資産形成を促すだけでなく、キャリア採用者(キャリア採用比率65.6%)など入社時期の異なる多様な人材に対して不利益が生じにくい、極めて公平で一貫した処遇体制を実現しています。

【今後の課題・改善点】
人事制度の基本構造や役員報酬(ROE連動の金銭・株式報酬など)については詳細に開示されていますが、一般社員に対するインセンティブ(成果連動型の賞与や、新規事業開発等の目標達成に基づく明確な金銭的・非金銭的報酬の仕組み等)の有無に関する具体的な記述は見当たりません。新規ビジネス領域への大胆な人材シフトやプロフェッショナル人材の育成を掲げる以上、現場の社員が高い付加価値を創出した際に、それがどのように個人の最終的な給与や昇進スピードという「処遇」に直接還元されるのか、インセンティブ構造の詳細を開示することは、コンサルタント視点での今後の課題と言えます。

4. まとめ

就職活動中の学生や転職を検討している若手人材にとって、株式会社CCIグループは「自律的なキャリア形成」と「変化を楽しむ挑戦」を求める人に最適な企業です。同社は伝統的な地方銀行の枠を完全に超え、コンサルティングやキャッシュレス、地域活性化といった非金融の新規事業へと大規模な人材シフトを行っています。MBA取得への手厚いリスキリング支援や、年齢・勤続年数に関係なく職務の大きさで評価される「キャリア型人事制度」、そして中途採用者にも不利にならない「退職金の前払い(キャリア支援金)」など、実力と意欲次第でフラットに評価される環境が整っている点は大きな魅力です。

一方で、会社全体が急激な変革期にあるため、ブランド理念への共感度低下や、女性の管理職登用の遅れ、男女の賃金格差といったリアルな組織課題にも直面しています。しかし、同社の真の強みは、そうした課題を隠さずデータとして正確に開示し、全社を挙げて論理的に解決に取り組む経営の透明性と誠実さにあります。この企業に入社した場合、AIを活用した抜本的な業務改革や新事業の立ち上げという激動の環境に身を置くことになります。与えられるのを待つのではなく、自ら手を挙げて地域の課題解決を牽引するプロフェッショナルになりたいと考える人材にとって、これ以上なくエキサイティングな成長機会に溢れた企業と言えるでしょう。